はじめに

 Cerela Genomics社により2000年に3ギガ(1ギガ=10億)におよぶとも言われるのヒトゲノムの解読終了を宣言したのに続いて、国際プロジェクトとして数年間に渡り活発に研究の行われてきた「ヒトゲノム計画(The Human Genome Project)」に関して、昨年アメリカ・クリントン大統領とイギリス・ブレア首相らがヒトゲノムの90%解読終了宣言を記者会見したのはちょうど1年ほど前のことである。ここで解読したといわれているのはいわゆる遺伝子の塩基配列だけに過ぎず、ゲノム解析に伴う大量データ処理し、個々の遺伝子の集合が生命システムとしてどのような意味をもつかを知るには今後の研究を待たねばならないといわれている。これらの分野は大量のデータを扱うことが必要となることからからバイオインフォマティクス(生命情報学・Bioinformatics)と呼ばれる新しい研究領域としてポストゲノム時代に大きく発展する分野として注目されている。

 さて、本研究室が現在行っているConcrete Genome Projectの目的は、コンクリートの分野においてもコンクリートの”blue print”となりうるような基礎的情報群(いわゆるConcrete Genome)を作り上げ、Concrete Genomeから想定される実際のコンクリートのあらゆる性能・暴露環境下での挙動等を予測する手法を確立することにある。
本プロジェクトがヒトゲノム計画と大きく異なることは、すでにあるblue printを読み取るとこを目的としているのではなく、われわれがいわゆる”blue pint of concrete"を作らなければならないことにある。その目的は、先人たちによって行われてきた膨大な一連の研究と本質的に変りはしないが、今まで断片的であった研究・情報をひとつのConcrete Genomeとして表現しようとしている点で野心的な試みかもしれない。

 近年の情報技術の発達に伴い、われわれはコンピュータ中の電気信号の組み合わせの中にコンクリートの性能をシミュレーションする宇宙を作成し、よりヴァーチャル(仮想的)にコンクリートを捉えることが出来るようになった。たとえば有限要素法による連成解析などは非常に古くから行われており、ヴァーチャルかつ包括的にコンピューター上でコンクリートの性能を捉え、より汎用的なコンクリートの最小情報単位を探る試みとして位置付けることができるであろう。

 現在までに、「遺伝的アルゴリズムを用いたコンクリート調合設計の最適化システム構築プロジェクト」としてその全体像の構成を終えており、ある一定の成果を見ることができた。今後、より精緻なConcrete Genomeを構築することを目的として、各物性関数のさらなる精度向上、美観性能の検討、環境負荷に関する評価手法の構築、多目的最適化に関するさらなる検討などに関して研究を行ってゆく予定である。

 以下に本研究室でのコンクリートゲノムプロジェクトに関する一連の研究の軌跡を示す。

1995年〜 遺伝的アルゴリズムの建築材料分野への応用の検討
【野口貴文・兼松学】
1998年〜 遺伝的アルゴリズムによるRC造建築物のライフサイクルマネージメント最適化に関する研究開始 
【兼松学・野口貴文】
1999年〜 GAによるコンクリート建築物のライフサイクルマネージメント最適化手法に関する研究(科研費-萌芽的研究)
【野口貴文・兼松学】
1999年〜 研究室プロジェクト「Concrete Genome Project」開始
遺伝的アルゴリズムを用いたコンクリート調合設計の最適化システム構築プロジェクト 
【丸山一平(修士論文)・菊川怜(卒業論文)・兼松学・野口貴文】

 

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Building Material Lab. Department of Architecture, The School of Engineering, TheUniv. of Tokyo