東京大学大学院 野口研究室 (B.M.E. Lab.) English


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ecoMAとは、さまざまな工場・都市施設の設備、物流能力をベースに、環境評価をするツールです。
マルチエージェントシステムというモデルを使って、
さまざまな製造工場の生産規模・設備機能・流通状態を入力し、二酸化炭素排出量、廃棄物量、リサイクル製品使用量などを、工場単位から地域全体までいろいろな角度からマルチスケールで計算できるツールです。




これまでの環境評価ツールは、日本全体、世界全体の都市構造・物流・産業構造などを大まかに捉えた上で、環境評価を簡便に行えるようにすることで、急速に進みつつあった社会の環境化に貢献してきました。確かに大まかな試算でも、非常に有用です。
しかしながら、 地域や産業構造の実態に目を向けてみると、地区ごとに異なる事情や条例があったり、いろいろな方針をもつ社長さんがいたりして、「大まか」では評価できない部分がたくさん絡み合って成立しているのです。
例えば、地域の輸送事情が悪いからリサイクルするより焼却処分した方が環境にもコスト削減にも良いのに、よく検討されないままリサイクルされている実態があったり、1000万かかる処理施設がないために、ある再生可能な材料が2億円分無駄に捨てられている実態があったり、材料によっては、もっとさまざまなことでしょう。こうしたことは、多くの地域に根ざした研究者や製造業者の中には感じている人も多いのです。
これから、さらに環境にやさしい社会を実現するためには、大まかな環境性能の把握だけではなくて、細かいところまでしっかり把握することも必要に違いない。ecoMAはこうした私達の願いをきっかけに開発が始まりました。



物流状態の違いによって精密な評価をすることが可能です(地理的な評価)


ecoMAは、「なるべく都市機能や産業構造の実態に即した形で環境評価をしたい」、という私達の願いをもとに、 マルチエージェントシステムというモデルをベースに設計されています。
このモデルを採用することによって、実際の工場の生産規模や都市施設の処理能力などの実際のデータをもとに、工場を地図上の実際の場所にプロットし(図1)、それぞれの工場や都市施設にいろいろな方針や意思をもたせることが可能になりました(図2)。こうすることで、まるで本当の産業構造のように、それぞれの工場や施設が自己判断しながら製造や活動を行います。この活動をいろいろな角度から観測できるように設定してやれば、複雑な産業構造であっても、実態に即して環境評価できます。


図 1. いろいろな工場の地図上での配置

 



図 2. 工場単位の意思・方針の持ち方

社会的な要請や受注、発注、いろいろな工場の行う活動を、自分の意思で判断し、それに基づいて日々の活動を行います。



例えば、田舎の工場だったら輸送費がかさみますが生産規模を上げられます。都心の工場なら需要地は近いですが、生産規模は大きくないかもしれないです。 ecoMAでは、それぞれの地理的事情を生かして、それぞれの工場が地図上でがんばっているのを観測して、環境評価するのです。



いろいろなレベルでの評価が可能です(マルチスケールな評価)


上記で説明したように、ecoMAでは、複雑な物流や産業構造であっても、実データを収集して入力してあげれば、それを再現することができる設計になっています。一般的には、以下のような単位で環境を評価することが可能です。

-工場単位の評価
さまざまに活動しているecoMAの中の工場のうちから、一つ、あるいは何個かを選んで、各工場の環境評価をすることが可能です。これは、地域の中の一つの工場がどのような役割を果たしているか、自分の工場や都市施設が、どういう状況にあるか、などを調べるのに適しています。

-工場種類単位の評価
一つの工場だけでなく、ある同種類の製造工場全体、都市施設全体の環境評価も可能です。これは地域でその業態がどのような状態にあって、業界としてどのような活動をすればよいか、ということを評価し役立てていくのに適しています。

-地域規模の評価
例えば、地域全体の環境評価をしたいときにも、その環境性能を評価することが可能です。



予測・政策の有効性の評価が可能です(時系列の評価)

このほかにも、地域行政や業界全体を統括する立場から、「どうやったら環境がよくなるか」を検討するために、「このまま我々が何の考えもなしに活動を続けていったらどうなるか」とか「みんながすごく環境に意識して活動したらどうなるか」といった想定されるシナリオを導入し、未来を予測することができます。また、シナリオとして、新しい条例を導入することによって、どういうった効果があるか、なども調べることもできます。
例えば、コンクリート建設物に注目して、全ての関係企業が原材料調達・輸送費を最小化するよう取引工場・原料の選定をおこなうとした場合の50年先までのコンクリート廃棄物量のシミュレーションを考えてみましょう。
基本的にどういう需要が発生するかを時系列であらかじめ入力することができるので、15年後に災害復旧で需要が大きくなったり、建設物の需要が年々落ち込んでいったりという傾向をイベントとして入力することができ、それらの需要変化に基づいて廃棄物量がどのように変化するかを見ることができます。



このような条件設定に基づいてシミュレーションを行うと、ecoMA内部では、工場たちが取引企業を変えたり、材料をコストの安いリサイクル材に拡大したり、逆にバージン材の方が安いからという理由で、バージン材に変換したり、さまざまな路線転換を行います。その結果、予測される地域のコンクリート廃棄物量がどうなるのか、コスト節減が地域の環境にどのような効果があるのかを確認することができます。(図 3 ※1)
またこれとは対照的に、 全ての関係企業が価格より環境性能を最小化するよう取引工場・原料の選定をおこなった場合の地域のコンクリート廃棄物量は図3-※2になります。

こういった予測的評価を用いて、業界の方針、地方行政のルール・条例の検討を行っていくことが可能になります。今、モデリングされている政策や工場の意思バリエーションはとてもシンプルですが、これを発展させていく形で、より現実に即した予測ができるようにしていくことを予定しています。






研究上の課題・現在進められていること

現在、建設産業系の製造工場、廃棄物処理施設、などを中心に、実際にある工場データの収集と同時に、実装に関する手順化を進めております。ecoMAにとってそのシステムは重要ですが、それ以上に、いろいろな業種の皆様から、製造や処理にかかわるデータや業界としてまとまった統計データ、所在地の記された住所などを集めるのが、とても重要になってきます。
これらのほとんどは企業や地方行政にとって、あまり簡単には公開できないデータであることが多く、私達はその入手に日々努力を続けています。
現在、建設産業系をecoMAにて実行することを目標に、いろいろなデータをいろいろな業界のかたがたのご協力を得て集めさせていただいております。(協力いただいた企業様はこちら。一部掲載許可申請中)

今後、この研究プロジェクトを続けるためには、多くの業界の方にご協力が必要です。環境によい社会を実現のために、これからもecoMAをよろしくお願い申し上げます。


本研究は環境省廃棄物処理等科学研究費補助金「コンクリート産業における環境負荷評価マテリアルフローシミュレーターの開発および最適化支援システムの構築に関する研究」の一部を利用して行われたものである

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