論文が Journal of Nuclear Engineering and Technology に掲載されました。
原子力発電所の反応容器周辺の遮蔽をコンクリートで設計する際、実際に使用されるコンクリート材料は、設計段階では必ずしも具体的に決まっておらず、多くの場合は機器側の設計者が遮蔽計算を行います。その後になって、利用可能な骨材やセメント、施工方法が選定され、最終的な調合が決定されるため、本来必要なはずのフィードバックが十分に働かない「一方向の設計プロセス」になっているのが現状です。
この観点から、既存のガイドラインに示されている遮蔽用コンクリートの元素組成をコンクリート工学の立場から計算し直したところ、含水量が不自然に高いもの、実際のコンクリートとしては合理的でない前提が含まれているものがあることが明らかになりました。
本研究では、遮蔽設計に用いる元素組成をコンクリート工学の知見から検討するという前提のもと、材料選定や施工プロセスの自由度を保持しつつ、どのように遮蔽設計を行うべきかを議論しました。特に、「保守的な設計」とは何を意味するのかを整理しながら、簡便に適用できるコンクリートの元素組成比の設定方法を提案しています。
単位水量(長期利用後の結合水や自由水量を含む)、骨材量、骨材の化学組成が重要な要素であり、本研究では骨材をSiO2系またはCaCO3系に簡略化することで、設計者が容易に元素組成を設定できる手法としました。
ニッチな分野ではありますが、実務で見られる誤解や設計上の不整合を解消するうえで有用な内容となっています。ご興味のある方はぜひご覧ください。
O. Kontani, O. Sato, S. Sawada, T. Igari, K. Fujikawa, H. Akatsuka, I. Maruyama, Quantitative evaluation of material-dependent elemental composition in ordinary concrete for radiation shielding applications, Nucl. Eng. Technol. 58 (2026) 104004. https://doi.org/10.1016/j.net.2025.104004.





